蝶ヶ崎ほのめの超化学診療所 2015.06
Illust. 希
[ 2015.07.02 掲載 ]
LOG
2015.06.09 vol.12
ありのままのびんが
びんがと捜索隊が、音信不通になっていたミケとソマリを発見しましたの。
無事だったのは良かったのですが、ひどくやつれた様子ですわ。
なぜ、ここまでボロボロになってるんですの、ミケ?
「砂浜でうつ伏せになって、連日連夜、カニを見たのにゃ」
「あたし、影からこっそり様子をうかがってたけど、あれは壮絶だし」
「カニの目線になって観察することが重要らしいにゃ……」
それが《クラブ・ウォッチング・グラブ》の活動ですの?
たかが数日、ぶっ通しで観察を続けたくらいで軟弱ですの。
生態系を探る学者なら、誰だってやってますわ。
……と思いましたが、興味のない対象を見続けなければならないのは
確かに厳しいですわね。
「ただ眺めるだけじゃないのにゃ。
スケッチの提出や感想を頻繁に求められるのにゃ!」
スルーすればいいですの。
「知らにゃいふりしたところで、
ムリエル様のハイテンションな感想を一方的に聞かされるだけにゃ。
さらに感想の感想を求められるのにゃ。無限地獄にゃ。
ろくに寝かせてもらえないのにゃ……」
白の世界のやり方は、人の道に反してますのね。
黒崎神門の影も形も見当たらない報告でしたが、
この知識、何かの役に立つかもしれませんの。
ふたりには気苦労をかけて、申し訳ありませんでしたわ。
お詫びに貯蔵庫から好きなだけ、鰹節を持っていって結構ですの。
「うにゃー。ほのめちゃんが女神にゃー」
しかし、そこまでの強制力を持つ活動から、
よく解放してもらえましたわね?
「にゃーたちに急用ができたことにして、連れ戻してもらったのにゃ」
「不慮の事故でほのめが急病を患ったから、なんかあったら話合わせろし」
人のいないところで!
天才・蝶ヶ崎ほのめ死亡説とか流れたらどうするんですの。
「そんな噂が流れるほど、あんたの知名度ないし」
なんですと!?
ああ言えばこう言う。
こう言えばああ言う。
びんがの憎まれ口が耳に心地いいですのっ!
「あほのめきもちわるい」
最近暖かくなったと思ったら、日差しが強すぎて毎日家から出られません。 どうしたらよいでしょうか? 助けてくださいほのめ先生。 〓 HN.0020 〓 千早壱斗 |
「それにゃ。その暑さも、ひどかったのにゃ。
炎天下の砂浜はまさに地獄だったにゃ!
しばらくおこた入りたくないにゃー」
夏の紫外線はお肌の大敵ですし、アタシもなるべく外出を控えたい季節ですの。
もちろん毎回そうも言ってられませんし、投稿者さんの参考になるか存じませんが、
暑い日に外せない用事がある場合の秘策を、特別に授けますの!
「おっ。期待できるかも? なになに? どうすればいいの?」
冷房の効いた車を玄関前に待機させますの。
「秘策でもなんでもない!
ていうか、ほのめはちゃんと一般市民の立場になって答えろし!」
「にゃあたちも、カニの立場で語れって怒られたにゃあ……」
アタシは参考になるか分からないって、前置きしましたの。
まあ、御用達の車がないならハイヤーを呼べばいいだけですわ。
ミケだって、そうしてますわよね?
「……も、もちろんにゃ。にゃあはケット・シーの王様にゃ。
にゃあ専用カーと専属運転にゃんこの1匹や2匹……。
あーカツブシ美味しいにゃあ」
ほのめ&びんがちゃんに提案です! 黒崎神門に支援されてるという倉敷世羅という 少女がいるんですけど、会って神門の弱点を聞き出してみてはどうですか? ただ、直接会っちゃうと神門に弱点を聞いたことがバレる危険があるので ミケ達に行ってもらうといいと思います。 〓 HN.0021 〓 リッカ |
倉敷世羅は知ってますの。
某ゆるふわディアボロスさんの部屋で、二度ほど、遭遇しましたわ。
「倉敷世羅か……」
アイツの関係者ということは把握してますし、すでに敵認定もしてますの。
ただ、あんまりにもお子様なもので、すっかり忘れてましたが……。
ミケ! ソマリ! さっそく出動して、近況を聞き出して来るんですの!
「そのことなんにゃけど……。
鋼でできてるソマリの心が、ムリエル様の件でポッキンいっちゃったのにゃ。
我々ケット・シーに二言はにゃいけど、三言四言五言ならあるのにゃ。
英雄王にゃんこになりたかったにゃけど、にゃあたちは任務を辞退するにゃ」
あら、残念ですの。
ミケとソマリは英雄とはいかないまでも、
勇者の領域には片足ツッコんでると思ってましたのに。
「にゃっ!?」
「勇者と英雄に上下関係あるんだ」
でも、無理強いはできませんの。
「やるにゃ! やってやるにゃ!
ソマリの分もにゃーが頑張ってくるにゃ!
行って来ーるにゃー!」
気をつけて行ってらっしゃいの〜〜〜〜ミケ〜〜〜〜。
……アタシの女神力にかかれば、ざっとこんなもの。
ちょろいもんですの。なのにアイツはどうして!
「待って! 倉敷世羅はあたしも興味あるから一緒に……ぐぇ。
なにすんのよ! 服ひっぱんなし、あほのめ!」
びんがは行かなくてもいいんですの。
アタシひとり残っても、張り合いありませんから。
「ほほう。へーえ。そっかあ。
ほのめは、あたしがいないとダメかあ」
びんががいないとダメですの。
びんがにしかできない、重要な役割がありますの。
「な、なによ真面目な顔して」
ほのめ様ほのめ様、もっとびんがに無理難題ふっかけて振り回してからかってあげて下さい。 私が喜びます。他人の不幸は蜜の味♪ 〓 HN.0022 〓 アイリス |
アタシも女神の端くれとして、
読者のリクエストにはなるべく応える方針ですの。
「ろくでもない提案に、気安く応えんなし!」
ほの女神様、ブログ始動おめでとうございます! ところで、実は最近ほの女神様のパートナーである迦陵頻伽さんが男の娘である、 という噂を聞いたのですが…… そのあたりの確認、、お願いします! 〓 HN.0023 〓 ビンガちゃん投稿なう |
一緒にお風呂入りましたけど、女の子でしたわよ?
「当たり前じゃん!
当たり前だけど、公衆の面前で恥ずかしいこと言うなし!」
あれ? あれれー? ありのままのびんがを思い出そうとしたら、
記憶にもやがかかって、あやふやになってきましたの。
かくなる上は、いまここで、確認してみますか。
「すんなし! 服に手かけんなし!
あっちいけーーーー!」
2015.06.15 vol.13
罪深き幼気
黒崎神門の情報収集のため、
倉敷世羅のもとへ向かったミケが、またも帰ってきませんの。
ですが、なんとなく今回は捜索隊を出さずともいい気がしますわ。様子見しますの。
「どうして?」
直感ですの。
「ひどい」
そんなことより、例のアレが届きましたわ。
「例のアレ?」
遅くなりました! 頑張りに頑張りを込めてドット絵びんがちゃん完成いたしました!! お手数をかけないよう原寸サイズも送付いたします。びんがちゃん受け取ってください! 〓 HN.0024 〓 白窓ヨシキ |
「これがあたし……!」
びんがは衣装のパーツが細かいから、
アタシと比べてかなり大きなキャンバスになったみたいですの。
「すごいって感想しか出てこない」
改めてアタシのドット絵と見比べてみますの。
違いすぎぃ!
さながら一世代異なるコンピューターグラフィックですの。
いったい何時間かかったのやら。
こんなに労力かかるものをノーギャラで要求するなんて、
まったく、びんがにも困ったものですの。
「リクエストしたの、ほのめだし!」
びんがという、可愛らしく幼気(いたいけ)な存在が諸悪の根源ですの。
あの時はリクエストせざるを得ない流れだったんですの。
そう! アタシは自然の摂理に従っただけですの!
「意味不明。
それはともかく、投稿者さん!
あたしたちのわがままにつきあってくれて、ほんとうにありがとう」
某イベントで手に入れたほの女神様とびんがちゃんのサインの入ったボードを 神棚に祀り毎朝敬礼を捧げた所、なんと宝くじに当たり彼女も出来、 順風満帆な人生を謳歌しています。ほの女神様の御利益すごい。 〓 HN.0025 〓 めくまる |
敬礼するだけでご利益が!?
アタシの知らないところで、
ワンダフルなプレミアムグッズが出回ってますのね。
さすがは世界に名だたる女神、蝶ヶ崎ほのめ。
存在の罪深さに戦慄を隠せませんの。
「あーはいはい」
まさかこのまま女神の中の女神、
女神神(めがみしん)まで上り詰めてしまうのでは!?
「ないない。ないから」
ほの女神様、某ゆるふわディアボロスやその妹さんが自身の抱き枕を出している事をご存知ですか? ほの女神様もびんがちゃんも可愛いので抱き枕の需要は絶対あります!! ぜひご検討のほどよろしくお願いしますm(_ _)m 〓 HN.0026 〓 アイリス |
抱き枕! その発想はありませんでしたわ。
アイツの抱き枕をつくれば、いつでも……。
……いいえ、誰かに知られて誤解されるのは癪ですの。
特にアイツ本人の耳に入ったら目も当てられませんわ。
危ないところでしたの。
「抱き枕?」
人物の全身がプリントされた、細長いクッションですの。
就寝時のおともになるほか、ストレス発散にうってつけ。
アタシは持ってないから実感ありませんが。
「業の深そうなグッズだし」
アタシはびんが本人がいれば十分ですけど、
びんがが興味あるならつくってあげますの。
蝶ヶ崎ほのめスペシャル抱き枕を!
「いらない」
聞こえませんでしたの。
はい、いいえで、もう一度!
「いいえ」
そういわずに!
ほしいって言ってくださいの!
「ほしくない」
そういわずに!
ほしいって言ってくださいの!
「ノーサンキュー」
そういわずに!
ほしいって言ってくださいの!
「おととい帰れし」
そういわずに!
ほしいって言ってくださいの!
・
・
・
2015.06.19 vol.14
Thanks Mother!
あまりにもミケが帰って来ないのでソマリを捜索へ向かわせたら、
こんな連絡が届きましたの。
『世羅ままのごはんおいしいにゃ』
『もう少しゆっくりしていくですにゃ』
アイツら完全に任務を忘れてますの!
「ひとまず無事で良かったし」
おかげで思い出してしまいましたの。
……お母様、ですか。
「ほのめ?」
ほのめちゃんとびんがちゃんがブログを始めたと聞いて。 ネタになるか分かりませんが、そろそろ母の日ですね。 私は実家から遠い所にいるので贈り物くらいしかできませんが、 母親が近くにおられるならお二人は是非とも親孝行してあげて下さい。 〓 HN.0026 〓 SubstiToad |
「母の日って5月じゃん。
とっくに過ぎてるし」
一度はボツにした投稿ですが、回収してきてしまいましたの。
「なんでボツに?」
だって、蝶ヶ崎家に母の日はありませんから。
「あー……そっか。
ほのめが小さい頃、亡くなったんだよね」
あら? お母様の話、しましたっけ?
「あっ。
……な、なんとなくそう思ったし。
それくらい、空気読めば分かるし!」
びんがって、たまに鋭いこと言いますのね。
お母様は4つ下の弟を産んで、早々に亡くなられましたわ。
アタシも面影をうっすら覚えている程度で、思い出はほとんどありませんの。
それなのに綺麗な花を用意したり感謝の言葉を述べたところで、
社交辞令のようなものになりそうな気がして。
まして、弟にとっては最初からいないも同然ですのよ。
無駄に母親のいない寂寥感を味合わせるくらいなら、
いっそなにもしない方がいい。
「うーん。そんなことは、ないんじゃないかなあ」
……って思ってましたの。
びんがが連日連夜、寝言で “ママ!ママ!” って連呼するものですから、
どんな遠い地にいる相手でも、ただ想うことが尊く価値のあることなのかなと、
考えを改めましたわ。
「あたしそんなに寝言言ってないし!
1週間に1回、言うか言わないかくらいのはず!」
はてさて、どうでしょう。
検証のため今晩から録音を開始しますの。
びんがの可愛い寝言を!
「やめて。ほんとやめて」
そういえば、びんがのご両親は赤の世界でご健勝ですの?
「あたしはつくられた存在だから、親と呼べるのはママだけ。
……生きてるよ。ママはしぶといから、絶対に死なない!」
ほんっとうに、大好きなんですのね。
仲が良さそうで、うらやましい限りですの。
なんなら、びんが、里帰りするといいですの。
ホームシックが少しは解消するかもしれませんわ。
「はあ!? あほ! あほのめ!
ホームシック? んなわけないし!
せっかくの決心、鈍るようなこと……言うなし。
それに、ほんとは、たぶん……もう」
あんたが何故、大好きなママの元を離れてまで、
アタシの元に居続けてくれるのか不思議ですの。
でもそれは、とても有り難いことですの。
「ほのめはあたしがいないと、
ダメだから……仕方ないし」
そうですの!
弟と相談して、今度の父の日に両親へプレゼントを送ることにしますの。
もちろんびんがも、準備、手伝ってくれますわね?
「…………うん。
邪魔にならないなら」