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2024.05.14

爆熱!ゼクスレター vol.3 「玖珠美甘ができるまで」

スタッフの熱い想いをお届けするコーナーが登場!その名も「ゼクスレター」!!スタッフの熱い想いをお届けするコーナーが登場!その名も「ゼクスレター」!!

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 爆熱!ゼクスレターの枠を借りてきました。ストーリー担当、みずいろ浮遊霊です。

 Vol.3は設定・物語に興味を持つ皆様へ「玖珠美甘(くすみかも)ができるまで」のコラムをお届けします。

 ① 新規キャラクターを企画する

 ② 星界と星界管理者の設定を詰める

 ③ クスミカモの設定を詰める

 ④ 担当作家を選定して発注する

 ⑤ 派生イラストやストーリーへ落とし込む


 いきなりですが、「Z/X」には〝物語が12年間地続きで継続している〟という、おそらくTCG業界では珍しい部類の特徴があります。

 困ったことにコレが弱点にもなっています。

 復帰した方や新規の方にとって、推しの現状把握は極めて困難でしょう。

 ……と言いますか、現役世代であっても群像劇の理解は根本的に大変かと思います。

 2023年、物語の舞台は旧時間軸(二周目)から新時間軸(三周目)へ移行しましたが、このタイミングで〝完全リセットする〟案もあったほどです。

 主要な登場人物の入れ替え、もしくは完全に別世界の物語を始める、ですね。

 結論として〝地続きの物語〟は現在も続いています。

 継続を止めるのは一瞬。反面、一度止めたら二度と元に戻せない。

 根気よく物語を追ってくださる方々もいらっしゃいますので、なにもかも〝無かったことにはできない〟と考え、いまに至ります。

 近年、物語のテーマを〝最初から無かったことなる〟を主軸に進めていたのは、ちょっとしたアンチテーゼでした。ここから先の物語は、失くしたモノを取り戻していくターンに入ります。


 とは言ったものの、現在進行中の物語が把握しづらいのは紛れもない事実。

 目を背けず、少しずつでも状況を打破できるよう、間口を広げていけたらと考えています。

 その取っ掛かりが 「ふるりちゃんねる」 です。

 物語は分からずとも、あるいは興味がなくとも、せめてキャラクターの個性や素性を知って好きになってくれれば、原作サイドとしては願ったり叶ったりです。

  • 初回の投稿受付は締め切りました。

 新キャラクターのようなそうでもないような、青の世界のVtuber「逢咲(おうさき)ふるり」。彼女が〝カルくユルく〟をモットーに、2024年6月から読者参加型配信風企画を始めます。

 なにとぞ応援のほど、よろしくお願いします。

01 新規キャラクターを企画する

 では、「ふるりちゃんねる」とは異なる切り口から、キャラクター開発の内部事情をお伝えします!

 玖珠美甘はどのような工程を経て、誕生したのでしょうか。

玖珠美甘

 新規キャラクター企画にも、ざっくり「ゲームシステム」と「背景設定」の二系統があります。

 近年、新規キャラクターは〝新システムを使いこなす人物〟として設計されてきました。B49「爆拳!綺羅星」から登場する玖珠美甘も例外ではありません。

爆拳!綺羅星

 ――ゲームシステム面。

 未来のプレイ環境を予測しつつ、新システムの開発を開始。様々な案をテストプレイしながら、内容を固めていきます。こちらの流れは私の管轄外のため割愛します。

 ――背景設定面。

 2024年度の物語は、〝外星界の存在を明かし〟〝未回収の伏線を拾う〟内容に定まりました。②③にて詳細を記載します。

 双方の要素が融合し、新キャラクターは「別星界の管理者」に決定しました。

 星をイメージした「アセンション」と、親友の遺志を継ぐ技法「オーバードライブ」を駆使します。

 これまでの物語の舞台は、9つある星界のひとつ、第6星界であることも明言しました。

 「Z/X」は「Zillions of enemy X」を略した言葉ですが、カタカナ表記すると「6」という意味も持ちます。五つの未来世界と現代世界という六世界から物語が始まったように、「Z/X」にとって「6」は特別な数字です。

02 星界と星界管理者の設定を詰める

 新キャラクターは星界に深く関わる人物となりました。

 2024年度から開始された「星火燎原編(コード:アセンション)」のバックストーリー補足も兼ねて、玖珠美甘の設定と並行して詰められた、星界と星界管理者の設定をお伝えします。

 第6星界のお隣、第7星界には戦闘民族[ズヴィズダー]へ進化した人類と[ク・リト]が存在します。

 武力至上主義の赤の世界に近い世界観ですが、決定的に異なるのは殺害を禁忌とすること。規則ではなく深層意識レベルで根付いています。ひとことで言えば〝脳筋〟。極めて健全な社会が構築されました。

クスミカモ

 管理者はクスミカモ。正確には元・管理者。〝拳がすべてを解決する〟という考えのもと、強者には武力バトルを、弱者にはじゃんけんバトルを持ち掛けます。どちらも同等の聖戦です。

 彼女は悲運な宿命を背負わされた第6星界を陰ながらサポートしてきました。時には第1~第9星界全体の調停者である「静点星」の目を盗み、星界間協定に違反するアクションさえも起こしています。

 しかし、第6星界を消滅へ導こうとしていたプリンセス・マギカ レヴィーの討伐に加担した事案が決定打となり、協定違反は確たるものへ。そのまま第7星界管理者を引責辞任するに至りました。

 考え無しの行動に見えますが、事実は少し異なります。

 親友の忘れ形見である第6星界を放っておけず、おおっぴらに手を貸せる身の上になるため、わざと罰を受ける状況を創出したのです。真意に気付いた静点星は、クスミカモの判断を尊重しました。

ヴィヴァーチェ

 一方、第6星界にとってもうひとつの隣接星界である第5星界管理者ヴィヴァーチェは、協定の抜け道を利用して干渉しました。第5星界の人類に〝彼らが編み出した高度な技術で隣接星界へ赴かせた〟のです。

 鬼神野シュリや天ノ川衣奈といった[パニッシャー]たちですね。

 ですが、それも過去の話。

 次々にトラブルを引き起こす第6星界の様子に呆れ果て、星界間協定を一方的に破棄してしまいます。宇宙を警備する治安維持部隊ウロボロスの殲滅を皮切りに、第6星界の強制管理に乗り出しました。

 ふたりが静点星を敵に回すリスクを冒したのは何故か。

 第5星界や第7星界は、第6星界が消滅するたび、天災の形で余波を被ったからです。それさえ除けば、どちらの隣接星界も適度な試練を人類に与えつつ、極めて安定した発展を遂げていました。

 明確な相違点は、最終的にクスミカモは「友情」を、ヴィヴァーチェは「効率」を動機としたことでしょうか。


 ついでに明言してしまいましょう。

 リルフィ時空こと「Code OverBoost」は第6星界の一周目。

 第二期アニメ&コミック版「Code reunion」は第5星界。

 ほかのメディアミックス世界観は、すべて第4星界と解釈していただいて問題ありません。

 これら「第●星界」の概念はかなり昔から大枠が決まっていて、幻夢郷の登場以前に片鱗があります。

 2018年1月25日に発売されたキャラクターパック「ハジマリノミコ」をご存じでしょうか。このタイミングで、それまで「竜の巫女」と呼ばれていた人物が「始まりの竜の巫女エア(Ea)」と名付けられました。

 第6星界管理者の名前は「W-ea(リューア)」。彼女はすでに消滅しています。

 砕けた心は第6星界全体に霧散し、のちに竜の姫君やレヴィーのコアとなりました。

 抜け殻となった器は善神エンキにより、新たな名前と生命を与えられました。結局、その生命までも散らすこととなり、いまや現代世界を見守る概念的存在と成り果てています……。

 そして、彼女のパートナーゼクスとなったラストゼオレムの肩書きは「天壌の星界」です。

エア&ラストぜオレム

 なんと「6」年前なんですよ。懐かしい記憶です。

 こんな具合に、2024年の「Z/X」は伏線をどんどん紐解いていきますよ!

03 クスミカモの設定を詰める

 未回収の伏線のうち、代表的なものが「赤の世界に属するゼクス使いの特異性」です。

 玖珠美甘の紹介文にある〝第6星界二周目の時点で、ある4名のゼクス使いに、こっそり第7星界由来の異能を授けた〟で気付いた方もいらっしゃるようですので、この場で答え合わせをします。

ゼクス使い 名称 異能の詳細とクスミカモの打算
黒崎神門 【定理破壊】 あらゆる既存概念を疑う。虚数領域と成り果てた第6星界を救える可能性。
倉敷世羅 【機構破壊】 電子機器を破壊。科学技術が著しく発達した第5星界を牽制する。
蝶ヶ崎ほのめ 【組成破壊】 無機物を有機物に置換。極限状態での食料供給を実現。
都城出雲 【●●破壊】  

 彼らに異能を与えたのは、ほかでもないクスミカモです。

 管理者権限を返上したいまとなっては、ここまで大掛かりな工作はできません。

 彼女の名誉のためにフォローしますと、一方的に人智を超えた異能を付与したわけではありません。神門・世羅・ほのめ・出雲、各自から了承を得ています。

 ですが、竜域・神域・零域からは星界を認識できない不文律があるため、当時のやり取りやクスミカモの存在もろとも記憶を失くしている状態です。神門が旧時間軸から新時間軸へ記憶を持ち越したなら、クスミカモが第6星界での活動を開始した現在、少し異なる展開を迎えていたことでしょう。

 異能について。

 神門の【定理破壊】は本人の努力と才能が度を超しているため、ほぼ埋もれました。強いて特異性を挙げるなら、垂直方向への……。やっぱり言うのやめます。

 出雲の【●●破壊】はもうしばらく伏せさせてください。一応、彼が物語に登場した直後からその特異性は発揮されています。ほかの3人に比べれば地味ですが、悪用すれば非常に厄介な異能、とだけ。

 上記4名と繋がりが深い点を鑑み、クスミカモにはそれぞれの要素が少しずつ採り入れられています。

1. 来歴は出雲由来

都城出雲

 出雲は名門女形の家柄を捨て、自衛隊北九州方面隊へ入隊しました。

 旧時間軸では若くして最高責任者に上り詰めましたが、のちに実権を神門へ委譲しています。ブレイバーやマイスターの利用を考えた神門の策略です。出雲はこの真実になかなか気付けなかったどころか、当の神門に心酔した挙げ句、破滅を迎え、最終的には死すら経験しました。

 新時間軸では〝英雄〟と呼ばれ、自衛隊北九州方面隊最高責任者よりも遥かに上の地位となる、四世界議会首魁の座に就きました。ですが、神門と出逢って以降、またも雲行きが怪しくなっています。

 クスミカモの〝地位と名誉を失う境遇〟は出雲に寄せました。

 もっとも、彼と比べればだいぶマシですが――

2. 性格はほのめ由来

蝶ヶ崎ほのめ

 理知的ですが、時に短絡的。

 ほのめも神門に関わりさえしなければ〝あほのめ〟と化すことは滅多にありませんしね。

3. 外見は世羅由来

倉敷世羅

 極めてコンパクトな体型になりました。

4. 名前は神門由来

黒崎神門

 この要素が最高に苦労しました。

 何故なら、プレイヤーの名前は 所属世界の勢力圏に実在する地名に由来する からです。

 いつまでも開発コード〝ゆかりちゃん〟のままではいられません。

 赤のリソース使いであるなら、中国・九州・沖縄地方の地名から拾う必要があります。

 なおかつ語感が〝クロサキミカド〟と似ていて、可能な限り可愛いらしい名前が求められました。外見が世羅由来となった時点で、女の子となるのは確定事項だからです。

 黒崎(福岡県)神門(宮崎県)に対し、玖珠(大分県)美甘(岡山県)を発見できたのは、かなりラッキーだったと言わざるを得ません。玖珠の皆さんと美甘の皆さんに多大なる感謝を!

 流れるように関連する名前も固まっていきます。

 第6星界で活動する「玖珠美甘」という名前から「クスミカモ」という第7星界管理者名が決まり、アルファベット表記は宇宙人ぽく「X-micamo」としました。

 第7が「X」なら第6は「W」、第5は「V」で良いだろうと、それぞれの管理者名も「W-ea(リューア)」「V-vace(ヴィヴァーチェ)」に決定します。②の解説から「W-ea(リューア)」という名前が最初からあったと解釈されたかもしれませんが、流石に6年前当時は未定でした。

 ですが、結果的に〝リュー〟と〝竜〟で怖いくらい綺麗にハマったのは、運命の悪戯、奇跡でしょうか。

5. 能力はク・リト由来

 先述の通り、第7星界は赤の世界を健全にしたような世界観です。

 揉め事はすべて拳で解決しますが、生命までは奪いません。計略なんてもってのほか。彼の地において戦闘はスポーツなんです。第7星界における獣刃詩は、特に神聖な決闘を見届ける審判役でした。

 クスミカモはク・リトを創造した人物。

 戦闘スタイルは自由自在。徒手空拳での格闘のほか、ク・リトのような触手も用います。

 とはいえ、触手ではあまりにストレートなため、世羅やほのめのアホ毛をフィーチャーしました。

04 担当作家を選定して発注する

 設定が大まかに定まった③の途中から、担当イラストレーターの選定が始まります。

 クスミカモはちびっこ。つまり、ちびっこを可愛く描いてくださる方が絶対の条件です。

 さらに、既存の低年齢外見キャラクター(世羅&春日、あづみ、ニーナ、きさら、ユイ、リルフィ)と異なるテイストであればバッチリです。

 そうして、ゆるふわ系の路線に定まりました。

 数名の候補者から、最終的に「Z/X」初参戦となる、桃豆こまもち 先生に依頼する運びへ。

 まずは桃豆先生にスケジュールの確認を行い、ご了承いただいたのち、玖珠美甘の設定とイラスト構図をお伝えする「イラスト指定書」を送信します。

イラスト指定書

 指定書の一部を抜粋してみました。

 すべての基本であり今後の玖珠美甘を左右する〝最初の一枚〟であるため、かなり詳細な要素までリクエストしています。ほかにも、具体的な参考画像などが添えられました。

 しばらくして、桃豆先生からご提出いただいたラフイラストをイラスト監修スタッフが確認します。

 このタイミングで表情の微調整をお願いしたり、カードデザイン時により映える角度や姿勢の調整をお願いしたり、背景やエフェクトの描き足しをお願いしたり、といったやりとりがあります。

 そうして、ついに完成へと至るわけですが――

ラフ
彩色
完成

 桃豆先生のご好意により、ラフイラストと彩色途中段階の掲載許可をいただきました!

 イラスト指定書から逸脱することなく、最大限に桃豆先生の個性が発揮されている様子が伺えます。

05 派生イラストやストーリーへ落とし込む

 クスミカモはショートストーリー 「嫉妬のBADEND」 やフレーバーテキストなどで事前に出演していたほか、エイプリルフール企画 にも〝みかんちゃん〟として登場しました。

じゃんけん差分

 イラスト指定書にもある通り、じゃんけん差分 も桃豆先生が執筆されています。

こもわた遙華

 ほどなくして、こもわた遙華先生のディフォルメイラストも届きました。

 主要人物すべてのSDを担当されているため、もちろん玖珠美甘も例外ではありません。

 B49「爆拳!綺羅星」合わせで、様々な別バージョンイラストも到着しています。

 これらは桃豆先生のイラストが完成次第、ほかのイラストレーター様方にご連絡し、発注しました。

あづみ一樹
桃稚ちあ
あん豆
永山ゆうのん
田所哲平

 桃豆先生がデザインされた玖珠美甘が、ワールドワイドになった瞬間です!

 届いたイラストから、順次カードテキストやフレームを載せるデザイン工程が始まります。デザイナーと印刷業者の、腕の見せ所です。

 煌びやかな加工が施された実物が手に届く日を、楽しみにお待ちください!

06 最後に

 ――いかがでしょうか。

 以上が新キャラクター「玖珠美甘ができるまで」の大まかな流れです。

 ここまで読んでいただいたうえで、改めて 玖珠美甘の紹介ページ「爆拳!綺羅星」のページ を見てくださると、関わった皆様(特に桃豆先生と私)がとても喜びます。

 クリエイションって妄想を形にすることなんですよね。妄想は無限に湧いてくるんですよね。時間がいくらあっても足りないんですよね。

 なにが言いたいかというと……。ストーリーまとめ本をつくる時間を私にくださいッ!!

 それではまた。

2024年5月14日(木)

みずいろ浮遊霊